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ソーセージ職人  河野夫妻に聞く

2012-06-21 3 Dailymotion

9.12.10<br /><br />東金屋さんに行ってきました<br /><br />東金屋さんを訪ねました。お休みの日でも、<br />店内はスモークの芳しい香りが漂い、<br />いつ伺ってもピカピカのショーケースが目を<br />引きます。いつもはずらっ~とショーケースに<br />並ぶソーセージやハム達も、今日はお休みの日。<br />静かな保管庫に大事にしまわれています。<br /><br />東金屋さんのソーセージは空気を抜きすぎない<br />ふっくらパック。豚からソーセージになってまでも、<br />一貫して余計なストレスを与えない為だそうです。<br />繊細な心遣いと愛情が、さらに美味しくしてるのですね。<br /><br />マスターは精肉屋さんの息子として生まれ、<br />店番や配達をして小学生の頃からお小遣を自分で稼ぎ、<br />高校生になってからは服を仕立てたり、銀座に遊びに<br />行ったりと、かなりお洒落な少年だったようです。<br />そういう若い頃からの見聞や食聞?が、今に<br />繋がっているのでしょう。ママさんとの出会い、<br />そして家業を本格的に継いで精肉屋に、そこから日々<br />研究し試行錯誤を繰り返して、ソーセージ屋に転身へと。<br /><br />ソーセージを勉強したい一心で、ドイツ人がいる所には<br />どこにでも押しかけ、怒られた事もあるそうです。<br />そういう一途な情熱には舌を巻きます。組織や会社に<br />属さず、自分の舌だけを頼りに勝負してきた姿は、<br />覚悟と潔さを感じました。東金屋さんの担当を<br />やらせて戴き、仕事に対して深く考え続ける事や<br />真摯に向き合う事、他にも言い尽くせない勉強と<br />経験をさせて戴いています。心から感謝し、<br />幸せに思っています。<br /><br />お話しにのめり込みながら、切り立てのハムと、<br />極上のワインのおもてなしに酔いしれ、<br />至福の時間を過ごしました。暗い中見送って下さった、<br />マスターとママさんの笑顔が、数日脳裏から<br />離れませんでした。<br /><br />(市原)<br /><br />時間にして、4時間。実に実に実りの多いインタビューでした。<br />いつか、まとめてお読みいただけるようにするつもりです。<br />ご期待下さい。<br /><br />(迫川)<br /><br />素材がダメだったら、いくら腕があってもどうにもならない<br />とマスターは映像の中で語っていますが、いわゆるファスト<br />フードのように、ソースで味つけしちゃうという手はあります。<br />調味料とは本来、素材(自然)の味わいを引き立てるものですが、<br />マックとか幼い頃から当たり前のように食べさせられたら、素材<br />なんかどうでもいい、味(調味料)さえついていればというように<br />なってしまう…かも知れませんね。それで買い手が納得するなら、<br />売り手も低コストですませられるし、万々歳でしょうが。<br />食の官能性は薄れるばかりです。味付けと言えば、<br />料理に砂糖使うのって知恵だと思うんですよ。戦争とかによって<br />食材に大きな制約がある時の。とりあえず味がつけば食べやすいし、<br />保存もしやすい。ただ、今の日本は食材に質・量・種類<br />すべてにおいて恵まれすぎています。なのに、昔の名残か<br />精糖会社の陰謀か知りませんが、砂糖を当たり前のように<br />使う人が多い。料理番組や料理本では、どの料理のレシピにも<br />大前提として砂糖と記されています。砂糖がいくら甘いからって、<br />素材の甘みにはかないません。あえて甘さを強調したくて<br />砂糖を使うというならわかります。選択の一つにはなる。<br />何の考えもなしに使うのはどうかと思うのです。<br />砂糖は化学製品で消化には非常に悪い。そういうことは<br />最低限踏まえておくべきでしょう。あとは個人の自由。<br />私は、大日本精糖という精糖会社の社内恋愛で生まれた子供。<br />元が砂糖みたいなもの。悪口はあまり言えないのですが。<br /><br />(井野)<br /><br />人間って、勝手な矛盾した生き物ですよね。<br />自分のイメージに反したことが起これば戸惑い、<br />パニクりますが、イメージ通りにことが進むと<br />退屈で死にそうになる。食に対してもそうです。<br />誰もが、その人なりの食のイメージを持っています。<br />私も例外ではありません。ただ、そのイメージを<br />ぬりかえるきっかけになるのが新しい出会いです。<br />異国の異文化だったり、恋人だったり。<br />その瞬間、味覚にも革命が起きる。<br />食の仕事に従事していると、自分のイメージに<br />縛られないためにも、全神経を舌に集中しなければ<br />ならない時があります。商品開発の時なんかまさにそう。<br />しょっちゅう外国に行ったり、新しい恋人をつくる<br />訳にもいかないので、味覚だけが頼りです。<br />ベルクのメニューに、ハムをパンにのせただけの<br />商品があります。高橋さんの作るミルクパンの甘みと<br />河野さんの作るボンレスハムのうまみが見事に<br />引き立て合って。私の思いつきで組み合わせたのですが、<br />そのおいしさに自分がまずやられちゃいまして。<br />さすがの押野見先生(ベルクのコンサルタント)も、<br />おいしいけど商品にするには…と一瞬ためらいましたが、<br />その後、一言「シンプル・イズ・ベスト」と。もちろん、<br />商品として定着させるには、長い時間が必要でした。<br />なかなかイメージしにくい商品ですし、ベルクの<br />価格体系からするとちょっと高めだし。でも今はしっかり<br />固定客がついています。<br />外食の利用者の立場に立つと、<br />ベルクってすごく新鮮なんですね。<br />今や大ヒット商品になったベーコン・ドッグなんて、<br />パンにベーコンと玉ねぎがはさんであるだけ。普通、<br />レタスとかトマトもはさむでしょう。<br />せめて食べやすいようにベーコン切ったら?と河野さんは<br />アドバイスしてくれますが、あの噛み切るのがまたいいんです。<br />それも素材の味わい。そのくらい河野さんの作る<br />ベーコンは素晴らしい。でも、それは体験してみないと<br />わからない。あのベーコン・ドッグに実際に出会ってみないと、<br />河野さんのようにむしろ心配になるでしょう。<br />本当にそれでいいの?って。<br /><br />(迫川)<br /><br />東金屋さんにソーセージをベルクにおろしてもらえないか<br />とお願いし、オーケーをいただくまで一年。「そんなに<br />かかった?」とマスターは照れくさそう。「そうそう、<br />わざわざここまで来てくれたんだよね」とママさんも<br />ニコニコ。もちろん、私も恨み言を言っているのではなく、<br />「じゃあ、どうする?」とマスターからさりげなくゴーサインが<br />出た時の喜びが鮮明によみがえり、思わずそんな話になって<br />しまったのです。ところで、ちょっと前ですが、亀戸の<br />駅周辺をぶらぶらしていると、新しい建物の一階が<br />屋台村風のちょっと雰囲気のある飲食街になっていて、そこ、<br />まだあるのかな。寿司も天ぷらも蕎麦も一通りそろっていて、<br />どこもこだわりの雰囲気がプンプン。それぞれ一応独立して<br />いるのですが、基本的にオープンカウンターで、店と店を<br />自由に行き来できるシステムにもなっているらしく。<br />一番入り口近くにあるお店がベルクのようなビア&カフェで、<br />メニューも似ている。それにしても何か見慣れた感じが<br />するなぁと覗いていたら、店主が現れて、いきなり<br />「君は新宿のベルクを知っているか?」と詰め寄るのです。<br />「いや…」と後ずさりすると、メニューを指して<br />「このポークアスピックはねぇ、そのベルクにしかないものだ!<br />千葉の東金屋というソーセージ屋のオヤジが作っていて」<br />と何も聞いてもないのに、ベラベラ話してくれるのです。<br />どうやらこの屋台村をプロデュースした(とっておきの<br />店を集めた)人で、本職は不動産とか。とにかく(ポーク<br />アスピックが)入手困難なレアもので、うちでは冷凍している<br />からいつでもお出しできるのだと自慢されるのです。飲食にとって<br />「冷凍」はむしろ隠しておきたいことですが、まだオープンして<br />間もないらしく、初々しい興奮が伝わってきました。ただ、<br />ふと、東金屋さんはご存知だろうか、自分の作ったものが<br />「冷凍」されていると知ったらさぞ悲しむだろうと<br />思いました。もちろん、どう扱おうとその(買った)人の<br />自由ですが、東金屋さんが売る相手にまでこだわるのは、<br />おいしく食べてもらわなければ、東金屋さんにとっても<br />意味のないことだからです。<br /><br />(井野)<br /><br />話し手/河野仲友 河野なおこ<br />聞き手/市原結美 稲葉将樹 井野朋也 迫川尚子<br /><br />映像/迫川尚子

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